[ ゲームレビュー ] 2007/08/07(火)
『「奈須きのこ」が最大限に活かされた形』 【メインスタッフ】
シナリオ:
奈須きのこ 原画:
武内崇 【観点別評価(S〜E)】
シナリオ:
S ビジュアル:
A キャラクター:
A 演出:
S ムービー:
A サウンド:
B システム:
B 点数:
95点 プレイ時間:
約65時間 *以下ネタバレを多分に含みます。購入予定の人は見ないことをお奨めします。
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唐突だが。奈須きのこの才能とははたして?
・膨大なプロットを「面白く」動かすだけの筆力
・登場人物たちの心情を「台詞」に凝縮する感性 まだまだ挙げられるかもしれないが、個人的にはこの二点が大きいなーと思います。
まずは一点目。
『膨大なプロットを「面白く」動かすだけの筆力』。
これはプレイした人ならば理解できるかなと。プレイ時間60時間を越える、物凄い大長編でありながら、設定説明的退屈な手続き以外の場面において「面白くない」と思った場面が一切ない。
キャラクターの行動。その行動原理。行動の過程。そして行動の末……物語を作るソレらには、なんら無駄がなく、ただただ「面白い」。それがこの作品を
超一流のエンターテインメントと仕上げた理由に思える。
つまり、この圧倒的な奈須きのこの筆力こそが、このゲームの評価を高めた最大の要因と言えよう。
無論そのエンタメ性の中にオタク心をくすぐる“何か”があるからこその評価であるが。エロゲーという媒体である以上、ただのハリウッド映画じゃあここまで絶賛されることはなかったんだし。
続いて二点目。
『登場人物たちの心情を「台詞」に凝縮する感性』。
この『Fate』において名言を挙げたら切りがないったらありゃしない。その中でも特にと思えるものを抽出する。
「ああ。時間を稼ぐのはいいが――
別に、アレを倒してしまっても構わんのだろう? 」 『Fate』より。余裕を常にその身に纏う、アーチャーを象徴する台詞。絶対に勝てないという絶望を絶対的なカッコよさで燃えに萌えさせてくれた一言。
「――――聖杯は欲しい。けれど、シロウは殺せない」
『な――――に?』
「判らぬか、下郎。そのような物より、私はシロウが欲しいと言ったのだ」 『Fate』より。セイバーにとっての最大の望みであった『過去の改竄』という奇蹟(聖杯)を、たったの一言の間に「そのような物」と投げ捨てたのが印象的。自分にとっての望みの全てを士郎に向いた事を力強く表した台詞。
「いくぞ英雄王――――武器の貯蔵は十分か」 『Unlimited blade Works』より。これで燃えずして何に燃えるか。逆境に立たされた主人公が、プレイヤーに勝利を確信させる絶対的な舞台を作り上げ、そして敵であるギルガメッシュ(の武器の貯蔵)を心配するという、自分が絶対的優位だと熱烈に印象付けた一言。
まあその他挙げ始めたら切りがない鳥肌名言の数々。どこか劇調な台詞ながら、そのキャラだからこそ映える台詞の数々。そしてそれを活かす展開作りも完璧。
台詞に続き地の文もやはり独特な作風(俗に言う奈須節)で多少引っかかる人もいるかもしれませんが、俺はこれが好きです。回りくどいの最高。
……まあ、そんなこんなで
このレビューアーは真症の奈須きのこスキーなわけですが。奈須きのこの“ゲーム”として、当時最高峰の工夫を凝らした演出が素晴らしかった。
戦闘エフェクト、数百という効果音。これでもかと、「奈須きのこのFate」を活かす演出が、この作品を傑作にまで後押ししたんだなあと思わずにはいられない。
以下、シナリオについてたらたらと。物語の核心に触れるかもなんで、ネタバレ注意――って、事前に忠告もあるし、すでに名言まとめてる時点でネタバレもあるので言う必要もないでしょうがw
「Fate/stay night」は主人公・衛宮士郎の物語である。聖杯戦争という命を賭けた舞台、そして何事も起こりうる舞台の中。最強の敵だらけのこの戦場で、衛宮士郎も局所的ではあるが「最強」の力を手に入れる。だが、その内にはあまりに子供じみて、沢山の矛盾を孕んだ信念をも抱えている。
その信念の行き先。正義の味方を目指すという、あまりにも男の子な夢と幻想の先を見事に書ききったなと思います。
バトルロワイヤルの中で描かれる中心はやはりその歪んだ信念である。だが、その他の恋愛観、パートナーとの絆、幸せとは何かといった、凡的なテーマもまたしっかりと書かれているのは好感が持てますなあ。
そうそう、バトルロワイヤルと言えば、その殺し合いの描写も好き。というか、このゲームをプレイして一番印象に残るのはどう考えても戦闘シーンw
先が読めない構成に、緊張感と絶望感の表現が非常にうまい。個人的には
「衛宮士郎VSランサー」、
「衛宮士郎VS英雄エミヤ」、
「衛宮士郎VSギルガメッシュ」、
「凛VS桜」の三つが特に好きだったりします。
特に初っ端の「衛宮士郎VSランサー」は衝撃だったなと。なんじゃこりゃーと思いながらクリックを続け、何時、何処からランサーが来るのかとワクワクしたのを今でも思い出す。そしてその後の名シーン、セイバーの召還といい、
もうこの時点で俺はFateにハマッてしまったのは間違いない。 ただ、この作品の唯一の弱点はやはり設定説明的退屈な手続きが多かったことにあったかな。世界観などの質量が大きなゲーム(別例としてはデモンベイン等が当てはまる)では仕方ないことかもしれないが。それでも無駄に多かったような気がする。
月姫からのファン、奈須きのこワールドのファンに対してのサービス的な設定説明。これは個人的にはいらなかったなあと。
それを半分くらい削ったら五時間ぐらいはプレイ時間短縮できるんじゃね? てな位に冗長。そこがこの作品の一番の弱点であったと思います。
まあ
知名度、内容ともにトップクラスに君臨する作品であることは否定できない作品なので、まだプレイしていない人には真っ先にお勧めします。熱いです。とにかく熱いです。
【関連リンク】
Fate/stay night 公式ホームページ