積みゲータワーをテロ爆破

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【ネタバレ有り】積みゲー崩し日記『君と彼女と彼女の恋。』その3

[ 積みゲー崩し日記 ] 2013年07月14日 20:00
 【文字数:10840文字】


君と彼女と彼女の恋。初回限定版君と彼女と彼女の恋。初回限定版
(2013/06/28)
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 『積みゲータワーをテロ爆破 更新再開のお知らせ』
 本記事を投稿する前にワンクッションとして、「こんな感想を見たい」という感想を[ 創作 ]という形で投稿させて頂きました。04月01日臭が漂う記事に騙された人は……いませんよね?

 というワケで。

 本記事では『君と彼女と彼女の恋。』の核心部分に触れつつ、本作の何が凄かったのかを語らせて頂きます。
 つまり、ネタバレがある感想です。
 今までは、未プレイ者でも「プレイする予定がまったくないなら読んでもいいんじゃないの」というスタンスでネタバレ感想を書いてきました。しかし本作だけは例外中の例外。

 ライナーノーツを開放したところまで『君と彼女と彼女の恋。』を進めた人以外は、以下を絶対に読まないでください。
   























< 以下ネタバレ >
























 ここを読んでいる「君」は、「最後の選択」を苦悩の末に選び抜いた仲間だという認識の上で書かせて頂きます。
 まずは私たちだけが交わすことのできる自己紹介を。私はアオイを選びました。その理由は追々語っていこうと思いますので、そういう認識で読んでいただければ幸いです。
 この記事では、私の「一度きり」のプレイ体験とプレイ中のメモ、そしてそれほど多くない枚数のスクリーンショットとクリア後にちょいと考えたことだけを元にして文章を起こしています。記憶違いはもちろん、〝見れていない〟シーンも多々あるかもしれませんがご了承ください。
 なお、アオイを選んだ果てにある結末に関しては一切述べるつもりはありませんので、美雪を選んだ君も安心して読んでいただけると思います。

 本記事では次の三項目に分けて、『君と彼女と彼女の恋。』を語っていこうと思います。

1.メタフィクションとしての『君と彼女と彼女の恋。』
  1-1.アオイ
  1-2.美雪
  1-3.心一
2.脱出ゲームとしての『君と彼女と彼女の恋。』
  2-1.ループからの脱出
  2-2.美雪からの脱出
3.美少女ゲームとしての『君と彼女と彼女の恋。』
  3-1.『君と彼女の恋。』
  3-2.パラダイムシフト
  3-3.美少女ゲーム界のラスボス





1.メタフィクションとしての『君と彼女と彼女の恋。』

 積みゲー崩し日記『君と彼女と彼女の恋。』その1の段階から書きたい書きたいと思いつつ、グッと我慢してきたことがあります。
 それは本作がメタフィクションであるということ。
 メタフィクション作品は往々にして「メタフィクションである」ということ自体がそのままネタバレに繋がりかねません。たとえ公式サイトがそれを匂わしていようとも、はっきりと明言されていない以上、本ブログの各記事では表記すべきでないと判断しました。
 そんなわけで、ネタバレ有りを明言した今ようやく伸び伸びと書くことができます。本作はメタッメタのメタフィクション。作品自体が「これは美少女ゲームである」と強く自覚していています。その上で一方では美少女ゲームという概念の深みへと潜り、一方では私たちが存在する現実世界にまで美少女ゲームという概念を拡張しようとします。


1-1.アオイ

「アオイは、こうりゃくヒロイン」
「このセカイは、ゲームなの。プログラムなの」
「ぬぐと、モザイクかかるの」
「このルートは、バッドエンド」
「セーブデータをやりなおすの」


 アオイは自らを攻略ヒロインと自覚し、世界がゲームであると把握しています。
 その言動は現実に生きている(と信じている)心一や美雪からは電波として処理されて、「ゲーム脳」のレッテルを貼られます。序盤のこのやりとりで、このゲームがフィクションとしての現実なのか、それとも自覚されたフィクションなのか、その境界があやふやになったものです。
 君はもうご存知でしょう。アオイの正体はカミサマのアバター。そしてカミサマは概念的存在。あらゆる世界の攻略キャラの総合体。全ての美少女ゲームの攻略ヒロインのイデア。その目的はたくさんの主人公を攻略して、イベントCGを回収すること。
 どこかで見たことがあります。
 ゲームの外側から主人公(=アバター)の意思決定を操作し、様々なゲーム(=世界)の攻略対象(=主人公)とのイベントを発生させ、CGを回収する存在。

 そう、それは私たち。美少女ゲームを遊ぶプレイヤー……の、ようなもの。

 私たちは一体どうして、美少女キャラクター側にも自分と同じような存在がいないと否定できるのでしょうか。私たちが各々のゲームで主人公を操作して擬似恋愛――身も蓋もない言い方をすれば、CG回収――をするように、ヒロインを操作してCG回収をするような存在がいないと。どうやって。
 きっと私たちが生きる現実世界にそんな存在はいないでしょう。しかし概念として、私たちはカミサマの存在を否定することはできません(一般的に言われる神様と同様に)。そう、たとえば公式ページに、カミサマの見ている世界があるのかもしれません。
 そしてCG回収という互いの目的が合致する以上、私たちとカミサマは持ちつ持たれつの関係なのです(図1)。

『君と彼女と彼女の恋。』図A
図1:プレイヤーとカミサマの関係

 私たちが愛した、そしてこれから愛していくヒロインの向こうには常にカミサマがいるのではないか。そんな意識を植えつけてくる『君と彼女と彼女の恋。』は、まさに「美少女ゲームを終わらせてしまう」作品なのかもしれません。

 また、そんなアオイが『君と彼女と彼女の恋。』のセカイで「寝取られヒロイン」、つまり主人公以外の男性とも関係をもつキャラクターとして「最適化」されたことも見逃せません。
 バックにカミサマという、プレイヤーに近い概念である存在を持つ彼女が、複数の男性(=主人公)を攻略する構図。それはまさに美少女ゲームにおいて、プレイヤーが主人公を操作して複数のヒロインを攻略する様を逆の視点から見せつけられている形になります。
 ハルの借り部屋に落ちていたヘアピンを見つけてから、アオイに触れられただけで吐き気を覚えると吐露した心一の心境。君もそんな彼に感情移入したかもしれませんが、私たちはひょっとしたら美雪を含む他の美少女ゲームのヒロインたちにも、同じ思いを抱かせ続けていたのかもしれません。そんな罪悪感を芽生えさせることが、アオイの一つの役割だったのかもしれません。

 美少女ゲームのヒロインというキャラクターでありながら、「美少女ゲームのヒロイン」と「複数ヒロインを攻略する主人公」に言及した内方向にメタなキャラクター。
 それがメタフィクションとして『君と彼女と彼女の恋。』を見たときの、アオイの正体なのです。


1-2.美雪

「私を、ゲームのキャラクターと、一緒にした?」
「ここを、私の……」 「特別な場所にしてくれる?」
「何があっても、永遠の愛を信じていてね」
「好きだったら、私を永遠に、『好き』って言い続けられるわよね?」
「貴方は、その特別な私を、理解してくれた」 「ありがとう」


 美雪は自分が現実と信じる世界に生きていました。
 しかしアオイのスマフォを通してカミサマの存在を認知したときからあらゆる先入観を捨て、心一――つまり君と、結ばれるために行動に出ます。
 まず美雪はカミサマとの送受信によって可能なことを把握していきました。そしてセーブ&ロードを駆使してこのセカイで自分が迎えるあらゆる結末を目にしました。
 それらのエンディングを君も見たと思いますが、心一と結ばれなかった場合、彼女は心から笑える結末を迎えることは絶対にありません。なぜなら本編一周目に、アオイの手によってセカイは「美雪が心一以外の男性に寝取られないセカイ」へとアップデートされてしまったからです。
 アップデートによる改変は不可逆。一度アップデートされるともう戻すことができないことの痛みを君も体験したでしょう。美雪はそれによって、心一と結ばれなければ必ず幸せになれないという呪いをかけられてしまったことになります。
 あるヒロインルートを攻略するとき、選ばれなかった他のヒロインは一体どうなるのか。美少女ゲームにおいてあまり深く考えてはいけない暗部を、まざまざと見せつけられた形になります。

 そんなセカイで美雪は自身が幸せになるためにどうすれば良いのかを考え、計画します。
 本当ならば、美雪ルートで交わした永遠の愛の伝説を健気に信じたい。しかし、君はアオイルートへと進んでしまった。約束を交わしたのに、いったいどうして!
 ……この段階で、プレイヤーと美雪の間にはある解釈の齟齬が生じています。
 プレイヤーは、心一と美雪が、美雪ルートの時間の中で永遠に愛しあうのだろうと勝手に解釈します。そのルートにだけ流れる時間、そこでの永遠を想像したはずです。
 しかし美雪の持つ時間感覚は従来の美少女ゲーム――その二次元ヒロインたちのものとは異なりました。彼女はあくまで自分を「現実の人間」、つまり君と同レベルな存在だとアピールします。時間感覚もその一つ。彼女の時間は『君と彼女と彼女の恋。』においてどのルートへ進もうとも、たとえ君がセーブ&ロードを駆使して作中時間を往復しようとも、ブレることはありません。

 美雪は、現実世界に生きる君と、同じ時間の流れの中にいるのです。

 その根拠はゲーム後半で読むことになる美雪の日記の中にあります。
 気づいた人もいるでしょうが、美雪の日記における日付は、プレイヤーがそのイベントを見た現実の日付と合致します。
 決定的なのは、それが美雪がカミサマとコンタクトする以前の日記から続いているということ。作中で季節は秋だと言及されているにもかかわらず、発売日に本作をプレイし始めた人の場合、美雪の日記は「6月28日」から始まります。
 美雪の時間は、君の時間と同じ。エンディングを迎えたらそこでおしまいな、ゲームのヒロインなんかじゃありません。
 つまり美雪の言う永遠の愛の「永遠」とは、現実世界の時間にかかっていたのです。だから美雪ルートをクリアしたからとアオイルートへと進んだ君の行動は、「永遠」を約束した美雪への裏切りになるのです。

 これ以外にも、二次元のキャラクターでありながら、美雪が現実の人間との距離を詰めるためのギミックは数多く仕込まれています。
 ひとつをピックアップするならば、例えばランダムに生成される美雪の性格。
 3の30乗――205891132093539通りの、「たったひとり」の美雪。つまり彼女は、異なるパッケージそれぞれに同じ性格の人格が梱包されているようなゲームのヒロインなどではないと、暗に主張するのです。
 コピー&ペーストで用意されたものではない、君だけの特別なヒロイン。「『ラブプラス』は現実」という笑い話もありますが、真の意味で君だけの存在であろうとする美雪は二次元の世界から一歩踏み出した位置にいるのかもしれません。

 美少女ゲームのヒロインというキャラクターでありながら、ゲームの外側の存在へと肉薄した外方向にメタなキャラクター。
 それがメタフィクションとして『君と彼女と彼女の恋。』を見たときの、美雪の正体なのです。


1-3.心一

毎日は、階段のように過ぎていく。


 『君と彼女と彼女の恋。』の世界に生きる君のアバター。それが須々木心一。
 物語をするためには登場人物が必要で、それは美少女ゲームも例外ではありません。
 美少女ゲームの需要は、主に作中のヒロインたちとの恋愛にあります。しかし、私たちプレイヤーができることと言えば、せいぜいゲームの中のイケメン主人公と意中のヒロインとが恋愛するさまを眺めるだけに過ぎません。
 それゆえに美少女ゲームの主人公とはプレイヤーにとっての憎っくき存在であり、それと同時に擬似恋愛を成り立たせるために必要不可欠な存在でもあると言えます。
 ……と、そこから導かれるプレイヤーと主人公間の問題は本作終盤の美雪とのエッチシーンが全てを物語っていたので、ここでは本作がメタフィクションであることが心一に及ぼした影響についてのお話をひとつ。

 上で引用したように、心一は毎日を「階段」だと喩えます。

毎日は、階段のように過ぎていく。
一度疑問に思ったらその途端、足をあげるのがつらくなる。
だから、一歩、一歩、何も考えずに、上る。
階段だから、別れ道はなく。
「あの時ああしておけば」なんて後悔は無意味で。
「人生は選択の連続だ」なんていうのは、失敗してから振り返って思う、後悔の絞りかすみたいなものだ。
過去の少し先にある、当たり前の明日へ。
一歩、一歩、進んでいく。


 以上がゲームスタート時の心一の独白です。「足をあげるのがつらくなる」や、「階段だから、別れ道はなく」などといったあたりが、階段である必要性を主張しています。
 しかし、それは別に「道」でも言い換え可能ではないでしょうか?
 そのような引っ掛かりを覚えながらプレイしていたゲームも最終盤。心一がセカイの中心――学校の屋上へ向かわんと階段を上るシーンで、私はある確信を得ました。
 そこでも心一は先ほどとほとんど同じ独白をします。

毎日は、道じゃなく、階段のように過ぎていく。


 「道じゃなく」。最後の最後にきて「道」であることをきっぱりと否定したのはなぜでしょうか。
 それは心一自身が、自分の生きるセカイがゲームであることに、これまでの過程からはっきりと理解したからだと私は考えます。

 道じゃなく、階段。それは心一にとって毎日は、プレイヤーのクリックよって1だけ進む、非連続なものであるということを暗喩しているのではないでしょうか。

 『君と彼女と彼女の恋。』は、プレイヤーがクリックしなければ進むことができません。クリックすることでテキストが切り替わり、心一にとっての日々が進行していきます。そしてそれは私たちや美雪が縛られる、否が応でも勝手に流れる現実世界の時間とは異なります。
 歩幅によって進む距離が変わることもなく、一段一段を着実に踏み抜くことで初めて刻まれる時間。それはまさに私たちのクリックによって彼の時間が進んでいることを示しており、だから毎日は「階段のように過ぎていく」のです。
 プレイヤーにとってのアバターに過ぎなかった心一が、最後の最後にその事実に気づいたからこそ、「最後の選択」のシーンでも部外者に終わることなくプレイヤーへと詰め寄ることができたのかもしれません。





2.脱出ゲームとしての『君と彼女と彼女の恋。』

 前項のメタフィクションの話とも関連がありますが、本作品はある意味で「脱出ゲーム」的な要素があります。
 ひとつはループ構造から、そしてもうひとつは美雪からの脱出。
 この二つの脱出ゲームは本作をよい具合に「前半」(ループ)と「後半」(美雪)に分かちます。
 君も覚えていることと思いますが、その境となるのは美雪が初めて君に声をかけるシーンになります。
 ここからは「ループからの脱出」と「美雪からの脱出」に分けてそれぞれ見ていきましょう。


2-1.ループからの脱出

 美雪によってゲームの一部が改変されるまでの間、美雪バッドのルートを進めるとあるシーンまで強制的に戻される――ループしてしまうことに、君は気づいたでしょうか。
 そのループの仕方がまたことさらに本作の物語がメタフィクションであることを主張しています。教室でふと目を覚ました主人公の手にはスマートフォン。そこには『君と彼女と彼女の恋。』のタイトル画面……。
 夢から醒めてもまた夢、とは少し違いますが、このゲームの前半ではアオイルートに進むか美雪とのエンディングを迎えるまで心一は延々と多重化された「ゲームの世界」に閉じ込めらます。
 ……とはいうものの、プレイ中のこの段階では脱出するための動機がない(あえて言うなら「プレイヤーがイベントCGを回収する」ことでしょうか)ために、「脱出ゲーム」と呼ぶには戸惑があります。しかし後半の「美雪からの脱出」と対応させるためにあえてそう呼ぶこととしました。

 ゲームのセカイの中で無限にゲームが続き、その中に主人公である心一が閉じ込められる。『君と彼女と彼女の恋。』の前半は、内方向にメタな脱出ゲームだと言えます。


2-1.美雪からの脱出

 後半に入ってからエンディングまで一気にプレイした人も少なくないのではないかと予想します。
 美雪がゲームの一部を改変し、心一を監禁してからの怒涛の展開。
 ここからは『君と彼女と彼女の恋。』そのものを内側から管理下に置いた美雪と、それを外側からプレイする君との闘いが始まります。
 まず最初の小手調べにと、美雪に「好き」と言うか言わないかで、リスタートするまで完全にゲームの進行が止まる無限ループに陥ります。普通の美少女ゲームでやらかせばバグだと思われても仕方のないレベルの仕掛けを真っ先にしでかす辺りから、笑いとともに戦慄を覚えた方もいるのではないでしょうか。
 その後君はセーブ&ロード機能を縛られて、美雪と結ばれる未来しかないセカイで延々と彼女と心一との日常を楽しみ続けることになります。
 そこにアオイは登場しません。嫉妬に暴走した美雪の手により心一にとって「ゲームのヒロイン」と認識される存在にまで堕ちてしまったからです。
 したがって美雪が管理するセカイから脱出する動機は、「アオイを救うため」ということになります。
 そしてここでの心一は君にとっても、そして美雪にとっても重要な存在として認識されず、美雪にとっては君と結ばれるための媒介――人形でしかありません。それゆえに先述の動機は心一のものではなく、君のものであるのです。

 なぜなら『君と彼女と彼女の恋。』に閉じ込められたのは、君なのですから。

 美雪が君を捕捉・監視し、その自由を制限します。そんな条件下で、君は彼女の隙を突かなければなりません。
 まさに脱出ゲーム。『君と彼女と彼女の恋。』という箱が現実世界を侵食し、君を巻き込み、美少女ゲームという虚構の檻の中で永遠に続くヒロインとの幸せな日常から抜け出すという。そしてそれは同時に普通の美少女ゲームが当たり前のように提供している快楽を、よりグロテスクな形で体現しています。
 そう思うとPCの中に収まるディスク媒体とは異なり、外の世界へと露出した本作のUSBメモリは、作中の世界観が外へとその有効範囲を伸ばそうとしていると捉えることもできそうです。USB採用には様々な理由があるようですが、それすらもちゃんと物語の演出に組み込む抜かりなさには脱帽するしかありません。
 そして、君も見つけたであろう美雪からの脱出の最後の鍵となるキーコードの隠し場所――ゲームそのものを支配した美雪でさえも手を届かせることのできなかったその場所を発見した瞬間のカタルシスは、まさに脱出ゲームの醍醐味とも言える快感でした。

 ゲームの外側へと世界観を拡張させ、その中に君が閉じ込められる。『君と彼女と彼女の恋。』の後半は、外方向にメタな脱出ゲームだと言えます。





3.美少女ゲームとしての『君と彼女と彼女の恋。』

 これまで「1.メタフィクションとしての『君と彼女と彼女の恋。』」でキャラクターを。
 そして「2.脱出ゲームとしての『君と彼女と彼女の恋。』」でシナリオを大雑把ながらに見てきました。
 この項ではそれらを総合して、『君と彼女と彼女の恋。』の総評に入りたいと思います。


3-1.『君と彼女の恋。』

 まず初めに告白します。『君と彼女と彼女の恋。』の根本となるテーマや内容は、私がプレイ前に予想していたものから大きく外れることはありませんでした。
 プレイ前に投稿した積みゲー崩し日記『君と彼女と彼女の恋。』その0でも言及したPSソフト『moon』と、本作はいくつかの類似点を持つからです。
 その類似点を列挙していくと今度は『moon』のネタバレになりますのでそれは避けるとして、この事実から導き出せるお話がひとつ。
 私が最も好きなゲームとして挙げる『moon』と近い位置にある本作は、まさしく私の趣味にドンピシャリな作品だったということです。
 ここまで「メタフィクションであること」に重点を置いて語ってきたように、私はこの手のメタフィクションにたいそう弱い。
 『君と彼女と彼女の恋。』は、私と相性の良い作品だったということです。

 前半、一周目に当たる美雪ルートは後の布石として配置されたシナリオであり、退屈に感じた人も多いのではないかと予想します。しかし、個人的にはもうこの時点でアオイの自己言及的な発言の数々にドキドキしていました。
 二周目に当たるアオイルートの途中から、本作の抱える強烈な悪意に引きずり込まれた人もまた多いのではないかと予想します。数々の電波発言のどれもが真実で、「寝取られ」という形で目の前に差し出されたときのバクバクとした焦燥感は忘れられません。
 後半に入り三周目。アオイを救うために美雪からの脱出を試みたはずなのに、そんな彼女に安易な選択から呪いをかけてしまった罪悪感と、そして次元を超えた深い繋がりから生じた愛しさとがドロドロと混ざり合いました。
 そして最後に突きつけられた選択。グルグルと回った脳とピタリと止まった身体。

 ドキドキ、バクバク、ドロドロ、グルグル……。
 深い感想などこれっぽっちも言えやしませんが、これらのオノマトペから感じてくれたら助かります。
 ずばり単純に、私は本作が好きなのです。
 美少女ゲームとして、エンターテインメントとして。
 好きだからこそ、最後に待ち構える究極の選択に対して真摯にならざるを得ませんでした。

 君と彼女と彼女の恋。
 君と、アオイと、美雪の、恋。
 それを突きつけられて、迷いに迷った結果、私はアオイを選びました。
 内方向にメタな彼女との恋。虚構の向こう側にある、彼女が言う「カミサマ」なんてデタラメな概念を仰ぎ見て、美少女ゲームへと深く潜ることを選択したのです。
 だからこのゲームは『君と彼女の恋。』。
 それは私の恋であり、そして君たちの恋でもあります。
 そこに主人公の心一が介入する隙はなく、真の意味でたった二人の恋物語なのです。


3-2.パラダイムシフト

 『君と彼女と彼女の恋。』は君を怒らせたかもしれません。実際、私もプレイしていて画面の内側から右ストレートを打ち込まれたような気分を覚えました。
 これまで見てきたように本作はメタフィクションを武器として、プレイヤーを現実と虚構のあやふやな地点へと追い込み、そこでたくさんの問題提起をします。CG回収に精を出して複数ヒロインを攻略していくプレイヤーの姿や、それによって生じる裏切り。ヒロインとの幸福な日常が延々と続く美少女ゲームという名の虚構の檻。小ネタを挟むならば「るる……ヒロインは、みんな、ショジョなの」と告白したアオイの台詞まで。それらは見る人によっては説教臭く、余計なお世話だと感じるかもしれません。
 なぜならば、それらは今まで暗黙の了解のうちに考えないようにしていた美少女ゲームの暗部だからです。考えていたくないからと思考の片隅へと追いやったまま忘れていたドロドロとしたものを、美少女ゲーム自身によって思い起こされる。それは確かに苦痛やストレスをもたらすかもしれません。

 しかしそれでも、私は多くの美少女ゲームファンにこの作品をプレイして欲しいと望みます。

 美少女ゲームというコンテンツが成熟し、その中で生まれ共有されてきた美少女ゲームに対する認識。本作ではその認識を、美少女ゲームの物語中で痛烈に皮肉ることで、プレイヤーの中で(良くも悪くも)爆発する爆弾へと昇華させました。それも成熟の果てにある停滞感が業界に蔓延しているこのタイミングにです。
 次の一手がなかなか出せずにいた業界。そんな中で本作は美少女ゲームユーザーの凝り固まった、また目を逸らして続けてきた美少女ゲームに対する認識そのものをさらけ出し、目を向けさせ、そして新たな認識へと更新しうる可能性を持ちます。
 その可能性を信じることができる根拠は本作において根幹のテーマである二者択一にあります。アオイを選ぶか、美雪を選ぶか。セーブ&ロードの効かないたった「一度きり」の選択を前に、君も苦悩したことでしょう。その選択に悔いがないよう深く深く思案し、結論を導き出したことでしょう。

 私と同じように。
 そして君たちと同じように。
 このゲームをプレイしたみんなが、それぞれ考えぬいた末に二者択一を果たしたのです。

 その時間が数分か、はたまた数十分かは人によるでしょうが、その間の思考はセーブ&ロードを駆使して何度でも繰り返すことが可能な選択をする際の思考よりも、何倍もの価値があります。なぜならそれはやり直しの効かないたった一度きりの貴重な決断だからです。
 君がどちらを選んだかは私にはわかりません。しかしアオイ/美雪を選択するに至った君の思考過程は今後、美少女ゲームの見方に少なからず影響を与えることでしょう。

 これにて美少女ゲームユーザーは二つの価値観で、新たに二分されたのです。

 分離された二つの価値観は、コミュニケーションを介して再び一つの認識を形成します。そのとき、ユーザー間で共有される美少女ゲームに対する見方は更新され、停滞の前には生まれ得なかった作品が登場するかもしれません(図2)。
 とは言え私もこの作品を境に選択肢の多いフラグの複雑な作品や、最早タブー視されている非処女ヒロインが増えたりといった分かりやすい変化があるとは思っていません。
 それでも少しだけ、そして少しずつ。現在から見て「次」の作品だと思えるようなゲームの登場に期待を抱かずにはいられません。

 少なくとも業界としては、『君と彼女と彼女の恋。』という新しいプロモーション活動の前例を得ました。それに加えてユーザー間で共有されてきた「美少女ゲームは斯くあるべし」という固定観念――パラダイムにもヒビが入り、それが転換されたとき。
 それを思うと、やっぱり私はまだまだ美少女ゲームから抜け出せないなと、白旗を上げる以外の選択肢はありませんでした。

『君と彼女と彼女の恋。』図B
図2:『ととの。』が引き起こすパラダイムシフト



3-3.美少女ゲーム界のラスボス

 最後に。
 私はゲームレビュー『君と彼女と彼女の恋。』(ニトロプラス)の冒頭にてこう記しました。

 『美少女ゲーム界のラスボス』と。

 全てのヒロインを繋げる存在であるカミサマの概念の提唱するアオイ。
 ゲームそのものを支配して君との永遠の幸福を作り出そうとする美雪。
 プレイヤーがそれらを打破したとき、美少女ゲームが次の段階へと進めるという根拠のない確信。
 このゲームを形容するものとして、あえてゲームの中の概念である「ラスボス」という単語を選びました。

 君たちの多くも、本作がまるでお気に入りのゲームのラスボスのような、強烈な存在感を発する存在として脳裏に生き続けることと思います。



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夏冬達樹 a.k.a こーしんりょー

Author:夏冬達樹 a.k.a こーしんりょー
 
雑食エロゲーマー。
レビュースタイルは「良いとこ探し」。
作品の企画書に載っていそうな「本質」を見抜きたいと思いながら、日々エロゲーをプレイする。

好物はロリと輪姦とおっぱい(大小問わず)。
抱き枕カバーが無いと禁断症状で夜な夜な金縛りに襲われる体質。
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極限脱出 9時間9人9の扉(非18禁)
極限脱出ADV 善人シボウデス(非18禁)
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