『麻枝准最後の傑作、新生Key最初の不安作。』 【メインスタッフ】
シナリオ:
麻枝准 , 樫田レオ , 都乃河勇人 , 城桐央 原画:
樋上いたる , Na-Ga 【観点別評価(S〜E)】
シナリオ:
B(S) ビジュアル:
B キャラクター:
A 演出:
B ムービー:
B サウンド:
S システム:
B 【特殊観点評価】
ゲーム性(ミニゲーム):
A 点数:
91点 プレイ時間:
約42時間 *ネタバレは可能な限り抑えていますので未プレイの人も安心して続きをお読みください。
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泣きゲーの先駆者、
麻枝准。そんな彼を中心に設立されたKeyで、『AIR』、『CLANNAD』等の名作たちの製作の中心人物であり続けた彼は、今作『リトルバスターズ!』を以てKeyのシナリオライターを引退するという。
ならば今後のKeyは何処へ向かっていくのだろうか。麻枝という業界トップのクリエイターが一陣を引く以上、少なからずの変化が訪れるだろう。
……そんな状況下で開発が行われた『リトルバスターズ!』は、
麻枝の最後の自分勝手を発揮した作品であり、それと同時に新人ライターの養成も兼ねた作品であった。
つまり、何が言いたいのかというと。
麻枝担当パートとそれ以外の差が開きすぎなんだよなあ(;´Д`) 麻枝准が担当しているのは
鈴ルートと、その続きであり、『リトルバスターズ!』の根本を描いた物語である
Refrain。このルートの完成度の高さといったら過去のKey作品のオーラスエンドと引けをとらない。
そしてそれ以外のルートは全てRefrainの伏線であり、感動を上乗せするために存在するといっても過言ではないだろう。
そういう意味で他のヒロインルートは決して必要ないとはいえないのだが……いや、それがあったとしてもやっぱりCLANNADの学園編と比べると大きく見劣りするというのが本音です。
どのシナリオも過去のKeyシナリオの焼き直し感がしたり、お家芸である奇跡の超展開がことごとく滑っていて微妙という評価しか下せない。AIRやCLANNADに参加していた麻枝の片腕、
涼元悠一さんと比べるとやはり今回起用した新人ライター陣は実力不足。
序盤であり、トゥルーエンドの基盤となるヒロイン編が面白くなければ集中力が途切れてしまう訳で。最後に傑作級のシナリオがあろうとも、そこまで引き寄せるリードが弱ければギブアップもありえる。
これは
今まで麻枝准は複数ライターによる大作を数多く作ってきたが、その製作スタイルが裏目に出たといえるのかもしれない。
ただ、今回参加したヒロインルート担当の新人ライター達の中で唯一名前が以前に『智代アフター』で露出していた
樫田レオ(美魚ルート担当)だけは良かった。過去のKeyシナリオとは大きく方向性が異なるものだったものの、Keyシナリオとして十分合格点を与えるに値する内容でした。
シナリオ面の最後としてはこのゲームにおいてある意味一番重要な位置づけとなる共通パートを。
共通パートでは毎日毎日キャラクター達によるお祭り騒ぎと、ぶっ飛んだギャグのオンパレードでまるで飽きさせない素晴らしい内容となってます。
そして筋肉。 CLANNADから更に進化したエンターテインメント性には笑わずにはいられない。愛すべき馬鹿(とかいて「親友」と読む)真人、謙吾、恭介の三人の存在がとてつもなく大きい。
そして筋肉。 そして今回力を入れているのがミニゲーム。何度も何度も繰り返すことになる共通パートを飽きさせないためにランダム要素の強いミニゲームを組み込むという作戦は功をなした。序盤は野球ゲームが面白く、それに飽きた頃には追加要素が増えていくバトルゲームが面白くなってくる……これも計算ずくめだろうか。
そして筋肉。 共通パートの素晴らしさは過去の全作品の中でも屈指の
筋肉ものに仕上がっているので、ここは心配せずにまったり楽しめるものになっていました。麻枝が抜けてもこのギャグセンスは受け継がれることを祈りましょうか。
もう筋肉してもいいですか? シナリオに関しては以上。これ以上いうとネタバレがポロリと出てしまいそうなのでw
ビジュアル面。今回は信者とそれ以外の評価の差が激しすぎる(因みに俺は信者)
樋上いたるさんとは別に、Key原画初参加となる
Na-Gaさんが人気を獲得したようで。
まあ確かに無難に可愛いおにゃのこを描ける人ですしね。人気が出るのも解ります。だが俺は敢えて樋上いたるを選ぶ(はるちんの立ち絵を拝みながら)。
だが今回は制服デザインがAIR、CLANNADと比べると可愛さに欠けるかなというのが正直な感想。
背景に関してはKeyお馴染みの背景絵師
鳥のさんが相変わらず素晴らしい仕事をしてくれました。CLANNADで見せた幻想的な風景というものは作品上ありませんでしたが、作品の縁の下の力持ちとしていい働きをしてくれたなあと。
音楽面。神。ゴッド。
折戸伸治&戸越まごめといったお馴染みのKey音楽スタッフの曲数は少ないものの、
Manackと
PMMKいった二つのチーム。そして今回もシナリオと同時に大量の作詞・作曲を担当した麻枝准がいい仕事をしてくれました。
今回はライター数も多いということでルートごとの雰囲気が大きく異なるため、
エンディングボーカル曲が合わせて4曲。どれも作品の読後感を保たせてくれる素晴らしいサウンドでした。
これで全てのシナリオが良ければなあ。 オープニングの
「Little Busters!」は麻枝作曲の中でも数少ない疾走感の漂う明るい曲調で非常に素晴らしい。まさしくオープニングテーマに……いや、
『リトルバスターズ!』という物語の始まりを表す曲としてこれを超える曲はあり得ないとすら思いさせられた。今年屈指の名曲です。
そして挿入歌である
「遥か彼方」はもういつもの麻枝ソング。サビの盛り上げ方が涙を誘うつくりになっています。
BGMに関してはAIRの「夏影」やCLANNADの「渚」のようなキラーソングは個人的になかったものの、日常パートで流れる何気ないBGMに関しては過去最高のクオリティだったかと思います。
まあ総評としては扉に書いたとおり、
『麻枝准最後の傑作、新生Key最初の不安作』といったところですね。
上記のシナリオ評価がB(S)というのも苦渋の決断。Refrainを見せられたらS以下の評価を付けるわけにはいかないと思うのですが、それがあってもヒロイン編はガッカリだった。プレイ時間としてはヒロイン編の比重のほうが遥に大きいという意味でのB(S)なので、けしてS(B)にはなりえないのです。
にしても今後新人ライターが成長しなければ、Keyの現在持つ地位が危うくなりかねない。そういう意味で、今回この作品に新人ライターを投入したのには大きなメリットとデメリット、
そしてVAVA社長の策略がひしめいていたのでは? と軽く思える作品であったなあ。いや、今のはギャグですよギャグ。
兎にも角にもこれまで沢山の感動をユーザーにもたらせた麻枝准のシナリオライター退陣は残念。今後もなんらかの形で創作活動は続けていくのでしょうが、また彼のKey作品が見る日が訪れるという
奇跡を我々鍵っ子は願うばかりです。本当にお疲れ様でした。